のスタンドは精神攻撃型なので、物理的な攻撃力はない。というのがメローネの見立てだった。もしかしたらあるのかもしれないけれど、それなら本当に最後の手段として隠されているのだと思う。普段つかわないのであれば、基本的にはないと考えて良いはずだ。
だから、普段のの仕事はほとんどが生身の体で行われる。おしゃれでかわいいナイフが好き、と前に言っていたので、いつでもどんなものでも貸してあげられるようにいろんな装飾のナイフをあつめては時々貸していたら、の武器庫と呼ばれるようになった。最高の響きだ。

の体はところどころ生身の人間とは違っている。具体的にどこがどう本物じゃないのかは知らない。特に尋ねる理由がないからだ。興味がないとは言わないが、なのでなんでもいい。ただ、脳のリミッターを外されている分、普通じゃ出せないような力を出せるというだけの理由ではあんな力は出ないと思うので、きっとあの右腕は本物じゃないんじゃないかなあ、いうのはなんとなくの予想だ。

考えながら体を動かしていると、ふと相手の動きがとまった。

「メローネ、考え事してる。上の空だとケガするわよ」
が俺にけがをさせるほど強いってこと?」
「武器があればそうなるわ!」

武器があれば、ね。武器を持ったの強さは、なんていうかもう、ものすごい。そういう風に脳をいじられているから、体の隅々までの制御がえげつない。自分の身を守るという本能が抑えられているので、なんなら油断させるため相手に抱きつき自分の腕の上からとどめを刺すなんてことまでしてしまう(本当にやめてほしいんだけれど)。でも、武器がなくたって十分人間離れして強い女の子だ。男女差があったって、たぶん本気で戦った場合は命をとられはしないんじゃないかなというくらい。

「謙虚だね。武器がなくてもそうなる、よ…」
「あ、あれ、変な風にあたってた?」

そういいながら仰向けに横たわると、先ほど蹴りをくらった脇腹をおさえて「いてー」と笑う。心配そうに手をついて覗き込むの顔が可愛いのですぐに収まった。最強の鎮痛剤だ。

「あたった。肋骨折れた」
「え!?」
「嘘だよ嘘」

なんだ、やめてよメローネ。びっくりしたわ!って膨れるほっぺがかわいい。もちもちでふわふわ。つつくともっと膨らんで、それからもっとツンツンってしたらぷはっと噴き出した。

ときどきと言うほど間隔はあけず、けれど毎日というほど頻繁にでもなく、週に2,3日か、多ければ4日とか5日とか、任務さえなければ俺とはこうやって体を鍛えていた。俺はただ筋トレだけするなんてつまらないし、は筋トレなんて無駄らしいのでちょうどよかった。足をだらっとのばして後ろに手をついて座っているが、つま先でさっき抑えた脇腹をつついている。痛い?もう治った。そう、よかったわ。本当はまだ少し痛かったけど、はほんの少しでも俺やリゾットがけがをするととても辛そうな顔をするので秘密にしておく。

「もうちょっとやりたいけど、メローネは汗だくね」
「うーん、もう疲れた」
「リゾットに頼もうかなあ」
「えー、じゃあもう少し頑張る」

完全に部屋着になっているボロいTシャツの裾で汗をぬぐうと、目をぱちくりさせて「お腹が見えるとセクシーだわ」なんていう。いつだってセクシーでかっこいいでしょって笑ったら、「そうね!いつもメローネのことは素敵だなって思ってるわ!」って満面の笑み。可愛いから、本当は閉じ込めて誰にも見せないで俺だけのものにしたいっていつも思う。きっと伝えたら、はその通り閉じ込められてくれちゃうので、これも秘密にしておくことだ。

「罰ゲームとかどう?次に1発当たっちゃったら夜ご飯のおかずをなんでも1つ譲るの」
「いいよ。本当に何でもいいの?ハンバーグでも?」
「…ハンバーグがかかったなら全力でいくわ!」
「えー、全力はちょっと…。じゃあ俺はスタンド使っていい?、俺の子ども産んで?」
「………スタンドじゃない子どもなら考えるわ」

にこ。笑った顔が普段よりずっと大人びて年齢相応に見えてびっくりしたのが1つ、セリフにびっくりしたのがもう1つ。冗談だったのについ真顔になっちゃって、、って名前を呼ぼうとしたらぽすんと腹部にゆるやかな衝撃。

「冗談よ。ハンバーグはいただきね!」
「えー!!」

私もうシャワーあびてこよ!といって軽そうな体で飛び起きると、は「約束だからね」と言って去っていってしまった。なんてずるいんだ。これだからのことが大好きなんだ。

はあ、と運動のせいで赤くなった顔(ということにしてほしい)に両手をあてて転がっていると、ごはんの時間だって呼びに来たプロシュートに蹴り上げられた。の笑顔で治った脇腹がまた痛くなった。





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無邪気で隠す癖の設定でシリーズ化しようと思っていたのでその設定を引き継いでいるんですが、無邪気〜の方で別に能力の説明もしてなければ具体的な設定に言及していないの同じ設定と言われてもわからない、っていう…。