※メローネとターゲットを追って公園


「今日はなんて良い日だ!君とデートできるなんて最高だね!」

そう明るく言い放つメローネは露出のない服にマスクを外した顔で、髪の毛も後ろで無造作に結んでいる。顔をさらすことが変装になるなんてどういうことだと思ったけれど有効なんだから仕方ないね。

ターゲットは開放的なところが好きなのかいつだってこの広い公園にいる。こそこそ隠れるほうが不自然なのでこうして顔を出してデートのフリをしているわけだけど、メローネは今日も絶好調にテンションが高い。もともとインドア派の私はこのテンションが眩しくてもう疲れてきたよ。

「ジェラート屋さんがあるよ。食べるかい?おれのオススメはもちろん"メロン味"だけど…」

悪戯するみたいな目でちらっと見るので私は吹き出してしまった。薄い緑色もその甘い味わいも全く彼のイメージではないけれど、でも彼は元気で可愛いメロンだったから。

「じゃあ、メローネ1つ、お持ち帰りで」
「えっ?」

面白い冗談だったから乗っかっただけだよ。なのにメローネは普段は見えない右目まで揃えてまんまるにして、きょとんと首を傾げた。女の私より可愛い仕草をするのは許可しないぞメローネ。その意味を込めて、間抜けな顔にでこぴんをプレゼント。

「いたっ!なんだよ、冗談かよ」
「そりゃそうでしょう。仕事中だよメローネ、ジェラートはあとでね」
「ちぇー。ちょっと嬉しかったのにさ」
「ん?」

私に持ち帰られたかったのかな。アジトに住んでるんだからいつだってお持ち帰りでしょうに。変なこと言うメローネだなあ。

「ほら、リーダーに怒られるよ。さっさとお仕事済ませよ…うわっ!」
「お仕事がなんだって?」
「…もう」

見失わないようにターゲットの方を振り向くのとターゲットがベンチに代わるのは同時で、私は見慣れたその風景に声を出して驚いてしまった。ギギ、とベイビィの声が小さく聞こえて消えた。

「さて、お持ち帰りはどうしようか。ジェラート、それともメローネ?」
「選択肢が変わってない?変なメローネ。そんなの決まってるじゃない」
「ってこは…」
「ジェラート、みんなの分も買って帰ろっか!」
「えー!?」

不満げな顔のメローネには、もちろんメロン味のジェラートね。

2019.01.15