※ギアッチョとちょっと良いお店に潜入する


ちょっとだけ大人な雰囲気のお店だから、私はてっきりプロシュートかメローネと一緒に行くものだと思っていた。あの二人は物腰が柔らかく他人に警戒心を抱かせず話をするのがうまいから。今日も任せておけばいいかなぁなんて思っていたのに、スーツを着たギアッチョが来たのでびっくりだ。

「ギアッチョが私をエスコートするの?大丈夫かなあ」
「喧嘩売ってんのか」
「違います違います、そうやってすぐ寒くするのやめてよ!」
「俺だってエスコートするならいい女にしてーよ」
「喧嘩売ってんの?」
「おい!すぐスタンド出すのやめろ」

じゃれ合いと言われることもあるやり取りだけど私達はいつだって本気だ。本当に失礼な男だけど、悔しいことに仕事はできるやつだからおとなしくエスコートされてあげることにして差し出された手を取る。そうしたら、さっきまでの騒々しいクソガキの雰囲気が一瞬で消え失せた。えっ。

代わりに身にまとったのはホワイトアルバムなんかじゃあなく静かに落ち着いた大人の男性の雰囲気で、年下のギアッチョがいつどこでそんなもの身につけたのかわからない私は酷く狼狽えた。こんなのギアッチョじゃない。私の可愛い弟分じゃない。

「さあ行きましょうか、シニョリーナ」
普段キレ散らかしてるときは自然と声が高くなる傾向があるから、落ち着いて話すことはあんまりないギアッチョの低い声っていうのはとても新鮮だ。そんな、柄にもない優しい声、出さないでよ。

私の顔が赤くなったのに気を良くしたのか触れた指先にキスなんかしてくるから、帰ったら絶対に許さない。今は仕事だから受け入れてやるけれど、覚えとけよギアッチョ。大人のお姉さんの魅力で、メロメロの腰砕けにしてやるからな。



2019.01.15