ソルベとジェラートはニコイチだから、区切って考えることはできない。2人といるのが私は好きで、きっと3人でいるときのときめきは恋と言っても差し支えないものだと思っているけれど、その感情がどちらに向けられているのかと言うと「ソルベとジェラートに」むけられているとしか考えられなかった。

アジトにある2人がけのソファは私たちの定位置だ。ソルベとジェラートはいつだってくっついて座っていて、私が来たらその真ん中をほんの少しだけあけてくれる。私はその隙間にぎゅうぎゅうと体を押し込んで納まって、それが私たち3人の最もしっくりくるポジションだった。私を挟んだ頭の上で、よく2人は目と目で会話をしているらしい。というのは雰囲気しか伝わってこないからで(だって無言だし、頭の上だし)、でもきっと間違いじゃないと思う。2人はラブラブで、そこに無理矢理まざっているのが私だった。

2人はチームの中でもちょっと、その、アレな人で、ギャングとして、暗殺者としてはパーフェクトな人格、っていうのがやんわりした表現なんだけど、そういう性格だった。でも私が間に割り込んだって普通に受け入れて笑ってくれるから、人間らしい優しい面だってちゃんとある。

「ねえソルベ、昨日は何してたの?」

私は一昨日の夜から昨日の夜まで、ほとんど丸1日かかる任務にでていた。アジトに戻ってきて疲れ果ててぐっすり寝込んで起きたのが今日の昼過ぎ。もぞもぞとリビングに出てきたら定位置に納まってる2人がいたので飛び込んで、まずはソルベに声をかけた。

「ジェラートといたよ」

なんともざっくりとした返事。それはいつだってそうでしょうって言う突っ込み待ちなのかもしれないけど、私は「ふーん」と気のない返事をした。

「じゃあジェラートは?」

次に聞かれるってわかっていたジェラートは、ソルベよりはずっと表情筋が柔らかいので前かがみになって私の顔を覗き込み、にっこり笑って言った。

「ソルベといたよ」

やっぱり。そういうと思ってた、っていう顔をした私にソルベも笑ったから3人で笑った。ひとしきり笑って落ち着いて、それからジェラートが「は何をしてたの?」と聞いてくれる。

そう、これは私が話したいことがあるときに聞いてもらうための合言葉だ。たとえば、「ソルベ、ジェラート、昨日は何食べたの?」って聞けば、「俺たちはパスタを食べたよ」それから「は何を食べたの?」っていう風だ。私は昨日食べたとびきりおいしいディナーの話をすることができる。別にこんなことをしなくたって普通に「昨日の夜ね、」って話しはじめればいいんだけど、いつからか始まったこのやり取りはなんだか通じ合ってるって気がして大好きだったからやめられない。

「私はね、任務に出てたの。聞いてよ、今回のターゲットったらね…」

人を殺すのなんて慣れっこ。別に心も痛まない。ぷつりと途切れて横たわる肉の塊はもう肉の塊でしかないから怖くだってない。その人を愛する家族や、恋人や、友人や、そういう存在のことだって考えても仕方がない。だから私はなんてことない顔でその場を後にする。けれどやっぱり、少しずつすり減っていくらしい。

なんだか調子がおかしいなって気づいたのは私自身のことなのに私よりソルベが先だった。の様子がおかしいってジェラートと相談して、それから2人は私を気にかけてくれるようになった。おいで、って、まるで子どもにするみたいに両手を広げて呼び寄せて、抱きしめられていない私の体がこわばるのを笑いながらジェラートの体温を感じたとき、私は何故だかほっとしてわんわんと泣いてしまって、それからだ。こうして2人の間で自分の話をするようになったのは。

安心する、安らぐ、生きてるって実感する、そんな心のよりどころの2人のことが私は大好きで愛してる。仲間として、兄として、そしてきっと異性としても2人のことが大好きだ。けれどどうにかなりたいとかそういう気持ちはない。だって私はこの3人でいる今の距離がとても気に入っているから。

「…というわけでね、今日、2月14日は、日本だと大切な人に日頃の感謝をこめてチョコレートを渡すらしいの」

昨日のターゲットは日本人で、ふらりと立ち寄ったカフェで話しかけて油断させて所定の場所に連れ去った。その中で聞いた話だ。へえ、素敵ですね、なんて言って笑いながら、私はこの人を殺したら帰りはチョコレートを買って行こうって決めていた。

「だから、ソルベとジェラートに。2人はセットみたいなところがあるから、これ半分こしてよね」

買ってきたのは、両手で抱えるようなおおきなハートの形をしたチョコレート。お店なんてあんまりいかないし甘いものもそれほど食べないから、こんなのがあるんだなってびっくりした。それを受け取ったソルベとジェラートは一瞬驚いた顔をしたけど、やがて顔を見合わせt、そのハートをぱっきりと砕いた。なんとも上手な3等分に。

、一緒に食べよう」
「ありがとうな」
「…うん!」

私が2人をニコイチと認識するように、きっと2人は私を含めた3人をセットで考えてくれている。これは私の愛だよ、なんて私がハートがぱっきりと砕かれたって全然気にならなかっただってその愛は、もう私達3人の胸にギュッとつまっている。

仲良しの2人と真ん中の私