「せっかくのクリスマスなのに、すみません」って、ジョルノは綺麗な顔を申し訳なさそうに歪めて言った。彼が私のことをとても愛してくれていることは知っているし、そう簡単に外を出あるけるような立場ではないことも知っている。だから私は物分かりの良い顔をして「大丈夫」って答えるしかなくて、ジョルノはそれが強がりだとわかっていても「ありがとうございます」って話を終わらせた。

そうして私は、期待したって仕方がないとわかっていたはずなのに予定をあけていたクリスマスを1人で過ごすことになる。だって、もしかしたら当日になって、やっぱり会えるって連絡が来るかもしれない。家にいたら突然チャイムがなって、ドアの向こうにジョルノがいるかもしれない。そんな想像するだけ無駄なもしものことを考えたら、私はどこにも行けなかった。人間っていうのは期待してしまう生き物だ。何も期待しないでいればがっかりすることもないだろうに、どうして待ってしまうんだろう。

何度目かわからない溜息をついて、次に会えたら渡せたらいいなとできるだけクリスマスっぽさを排除したプレゼントを傍らに置いて、見上げた時計はもうすっかり夜の時刻をさしていた。窓の外のにぎやかさは落ち着いていて、夕方から降り始めた雪はうっすらと積もっている。ゆらゆらと月明かりが照らす雪の影が部屋に差し込むので、そろそろ電気をつけようか、それとももう少しだけこのまま、薄暗さに寂しさを溶かしていようか。そんな風に考えながら深く腰掛けた椅子の下で足を揺らしていたら、そのゆっくりしたリズムはいつの間にか私を眠らせてしまっていた。





ほんの少しの物音がした気がして私は目を覚ました。ゆっくりと目を開いて、体の痛さからリビングの椅子で眠ってしまったのだと気づく。物音の正体が何か探ろうと立ち上がり電気のスイッチに手を伸ばすと、何か温かいものが手に触れた。慌ててスタンドを出して全力で振りかぶる。しかしその拳はあっさりととらえられてしまって、その瞬間、私はその気配の正体を知った。だって、私のスタンドの攻撃を受け止められる人なんて1人しか思いつかない。

「…ジョルノ?」
、おはようございます」

パチンと音がして目の前が眩しくなって、一瞬だけ目を閉じる。その隙に見えた輝かしい金髪は間違いなくジョルノだ。今日は仕事だって言ってたのに、いや、でももう日付は変わっているだろうか。目をこすってしっかり開いたら、やっぱり目の前にはジョルノがいた。綺麗な目を優し気に細めて私を見下ろすから、私はこれが都合の良い夢なんじゃあないかと思ってしまって。

「すごく、良い夢だ」
「夢じゃあありません。寝ぼけてるんですか?せっかく急いで仕事を終わらせてきたのに」

優しく頬に触れる手は出会った頃みたいな柔らかさはすっかりなくなり、ゴツゴツした男性の手になってしまったけれど、そこから伝わる優しさはであった頃より増した気がする。その優しさに擦り寄ったら、その優しさは手のひらだけじゃあなくって全身でぶつかってきた。

「仕事をしていたら外のにぎやかさが聞こえて、そうしたら、どうしても会いたくなったんです」
「もう、ボスがそんなんでいいの?」
「僕はボスである前に、の恋人ですから。いけませんか?」
「…それなら、仕方がないなあ」

力強く抱きしめてくれる腕だって、出会った頃はもっと細かったし、なんなら私の方が身長は高かったはずだ。今では私はすっかりその腕に収まってしまうし、もしここから逃げ出そうとしたところで絶対に逃げ出せないんだろうなってくらいに強い。

「ねえジョルノ、プレゼントがあるの」
「僕もに渡したいものがあって…、でもその前に」

抱きしめられていた腕が緩くなって、ぴったりくっついていた身体に少しだけ距離があいて、それから綺麗な顔が近づいてくる。部屋の電気なんて人工的なあかりだけど、それでもジョルノの金髪はきらきらに輝いてその綺麗さで私の胸を締め付けるので、愛しい気持ちがぎゅっとつまって私は目を閉じてそれを受け入れた。このたった1つのキスだけで、会えるかもわからないジョルノのことを待って過ごした1日なんて、全然なんてことなくなるんだ。ジョルノは私のことを幸せにする天才だね。



待ちぼうけ

(来てくれてありがとう!)