// 1番目の義体

初めて義体化に成功した個体はリゾットの妹になった。まだ不安定な薬をたくさんつかって、まだ未検証の配合を試して、ほとんど人体実験だったそれは多くの命を奪っていたから、初めて成功し眠っていた少女が目を開いたとき、研究室のメンバーは自分の目を疑った。どうせ今回もダメだろう、と思っていたから。

1人で街を歩いているときに交通事故にあった少女。もともと子ども好きで、いとこの子どもの交通事故死をきっかけに裏社会に身を置くことになったリゾットはそれを無視できなかった。跳ねあげられ天を仰ぎ、それから地面にたたきつけられた身体がまだ温かいのか冷たいのか、助かるのか助からないのかもわからないまま担ぎ上げて研究所に駆け込んだ。なんでもいい、助かる可能性があるならどうにかならないか。

当時まだそこまでの権限のなかったメローネは、リゾットの必死の形相に思わず頷いてしまって、虫の息の少女を見たときにはそれをとても後悔した。こんなの、助かるわけがない。けれど、自分の体のほとんどの生命維持機能を失いかけていたことが良かったのか、奇跡的に薬の効果が全面的に現れ少女は目を覚ました。

使い物にならなくなった臓器、腕、足、他さまざまなものを機械に置き換えた少女は鉄分を操るリゾットと仕事をするのに相性が良く、メタリカを使って体の制御が可能という特徴を持っていた。金属の割合が多いことは生身の部分への負担が大きいということでもあったが、そこは様々な薬でカバーして誤魔化して補って、そうして数年、初期の薬の副作用を最初に現したのは彼女だった。