// 実の兄妹のように

「ボンジョルノ、イル、今日は…ディモールト?良い天気!」
「ああ…、おはよう、それはメローネに教わったのか?」
「Si!昨日ね」

大きな音を立ててカーテンを開け、その日の天気を報告する。の日課の1つだ。過去の記憶を失って目覚めたは、きょとんとした顔であたりを見回し、イルーゾォを見て「誰?」と首をかしげた。目覚めるまでの1週間、みっちりと叩き込んだ半端な日本語のボキャブラリーからその言葉を探し出して、ぎこちない日本語で説明をする。それから、簡単なイタリア語は覚えているというとは日本語とイタリア語を半分ずつ交えて会話をすることになった。

2人がぎこちなく日本語とイタリア語を操ってなんとか意思の疎通を図った後、流暢な日本語で自己紹介をしたメローネの頭をイルーゾォが思い切りひっぱたいたのはまた別の話だ。

「昨日はね、にも会ったの!はすごいのよ、私より年下なのにとっても頭が良くって優しくって、でも私を見ると少し悲しそうにするの。は綺麗だから、そんな顔させちゃうのはごめんなさいって思うんだけど…でも私、とも仲良くしたいわ、メローネさんの…モーリエ、なんでしょ?」
「ああ、は自分の体で実験してるからな…。のスタンドも、の研究の成果だ」
「ほんとうにすごいのね。私もイルの頼もしい妹、がんばらないと」

さて、朝ごはんつーくろ!と朝から慌ただしいはキッチンへ走って行った。根がそういう性格だったのか、過去の記憶を消したことが影響したのかは判断できないが、はとても明るい。日本の花であるという「」を名前として決めたのはイルーゾォだったが、写真でみた儚げな薄いピンクのイメージとはちょっとだけ違うような気がしてきた。

ぼさぼさの髪を1つに括り、仕事のない1日を始めるためベッドから抜け出す。もういい匂いを漂わせ始めたキッチンから、ドタバタとせわしない音が聞こえるのに笑みを漏らしてあくびを1つ。暗殺者の自分と、外国で事故に合って親を失い義体として記憶を操作された少女。そんな2人にはまったく似合わない、穏やかな朝だ。