// 家族になりたい

フラテッロは通常同室で暮らしていたが、プロシュートとは別室で暮らしていた。それはの年齢が他の義体と比べてかなり高かったことも理由の1つと説明されていたが、プロシュートの気持ちを考えればそれは仕方のないことだ。本当の理由は説明できない。

だからがプロシュートの部屋を訪れ、その写真を見るのも久しぶりのことだった。

「…私、髪が伸びたと思いませんか?」
「そうだな、邪魔か?」
「いいえ、」

肩につかない長さに揃っていた髪の毛は、細胞の調整のせいかやたらと伸びるのが早かった。なるほどこれは育毛剤の研究に乗り出すべきかな!?なんて言いながら笑っていたのはだったが、そういう地味に金になりそうな成果をいくつか出して予算をどんどん増やしてく少女は今では研究所のスターだったから本気なのだろう。余計な話だ。

「ただ…その写真の子に、ますます似てきたなあ…なんて思って、」

一瞬きつい視線でにらまれたので、は肩を竦めた。プロシュートが実妹のことを心の底から愛していて大切にしていて、その思い出は彼の心のかなりの部分を占めているというのにはもう気づいていた。だからこそその少女にそっくりな自分が、なぜここにいるのか知りたくなったのだ。

「あの、私はプロシュートさんのフラテッロです。…私では、妹の代わりには…なれませんか?」
「おい、バカいうなよ」
「…はい、すみません」

あまりに突き放すような声色だったので、それ以上言えず黙ってしまった。プロシュートも何も言わず気まずい沈黙が訪れたが、それを破ったのはプロシュートだった。

「…妹は妹でその代わりは誰もいない。それはお前もだ。お前はお前で、お前の代わりはいねーんだ」
「プロシュートさん…」
「この話は終わりだ。明日の仕事の打ち合わせすんぞ」
「はい。私、プロシュートさんのためにがんばります」

ときどき、の笑顔がにかぶって見える時、プロシュートはいつもと違う笑みを浮かべた。たとえば、今みたいに。