// 動けない少女

「生まれつき四肢に障害があって、寝たきりの娘を見ているのはもうつらいってご両親が」

その電話を取ったのがじゃあなくってよかったな、とメローネはぼんやり考えていた。は子どもに感情移入しすぎるところがあって、それは自分が孤児院で育った過去があるからなのかそれより前に何かあったのか…尋ねたことはなかったが、こういう話にはひどくうんざりした顔をする。その顔の裏には痛ましいと思う表情が隠れているのを知っているメローネは、のその顔を見るのが嫌だった。

「わたし、動けるようになるんですか?」

動かないのは四肢だけで、言葉もはっきり話すし頭の良い子だ、とメローネは思った。訪れた病院のベッドで今後について説明する。君の両親はもう君を見ているのがつらいんだそうだよ、と残酷な現実を突き付けても、あまり動揺しない少女はいずれこうなるだろうと思っていました、と、感情のこもらない声をだした。

「もし体が動くようになるのなら、わたし、どんなことだってできます」

幼い子供が発するにはあまりに切実な響きだ。自分が来たのは正解だった。何度目かの感想を抱いて、メローネは引き取りの書類にサインをした。