// はじめまして

街にある比較的きれいな孤児院の中で、1番に頭が良い少女の名前はといった。彼女はどんなことでもすぐに吸収し自分のものにしたし、生活態度もまじめで年下の子ども達からの人望も厚かった。それでいて控えめで、自ら前へ前へとでていくタイプでもないので出る杭を打とうとするものもおらず、実にまっすぐな子どもだった。

そんな彼女の噂を聞きつけたとある組織が、という少女をぜひうちの研究チームへ、と名指しで勧誘をかけてきたのも当然の流れだと思われて、水面下でこっそりやり取りされた巨額の寄付のことなんて全く知らない少女は、孤児院からパッショーネという組織へと引き取られた。新しい保護者の名前はメローネ。研究チームにはもっと上の立場の人間もいるが、現場では最も上の研究員であり大きな意思決定権を持つ青年だった。

「君がか?俺はメローネ。この建物にいる研究員の中では最も偉いから、誰かに何か言われたら俺の名前を出すんだよ」
です。ありがとうございます、その…メローネ、さん。父とお呼びしたほうが?保護者という立場になると、」
「メローネでいい。父とはいうけどそんなのは書類に書いてあるだけの文字に過ぎないからな。それと、そんな堅苦しく話す必要もない」
「わかりましたメローネ、話し方については…努力は、します」

メローネが初めてみた少女の笑顔は、苦笑と言うしかないぎこちないものだった。その表情を見ても特に笑わせてやりたいなあなんて思う感情は湧き上がらず、ただ、年齢に対してあまりにも大人びているので、随分と機械みたいな子どもだな…と、それが第一印象だった。