どん、と地下から響いた衝撃に、ギアッチョは一瞬でスタンドを構えた。しかしとっさに立ち上がったのは自分だけで、同じくリビングにいた周りはけろっとしているし、メローネなんかは「今月も派手だな」とケラケラ笑っている。とりあえず緊急事態や襲撃にあったわけではないということだけ理解して、自分だけわからない何かがあることに不機嫌な表情を作った。

「なんだッてんだよ!!」
「あれ、ギアッチョは知らないんだっけ?」

イラつきを誘うセリフはしかし本当に「意外だ」という響きを含んでいる。

だよ。地下室にいる」
「地下室…?ンなもんあったか?」

聞けば、このアジトにはの部屋から降りられる地下室があるらしい。万が一の襲撃などにそなえて1階の奥はリーダーであるリゾットの部屋となっているが、の部屋は玄関の真横にあるもっとも危険な位置だった。なんでがそんなところに、と思ったこともあったが、地下室があることが理由だったのかと古い疑問が解決した。

「地下室で何やってんだ、の奴」
「うーん…」

なんでもかんでもぺらぺら話すメローネにしては歯切れが悪い。その視線はプロシュートをとらえていて、煙をふっと吐いたプロシュートは「別に隠すようなもんでもねぇ」とギアッチョの方を向いた。

「生理中はスタンドの制御が効かなくなるんだと」
「...ッ!」

かっと顔が赤くなる。あはは、とそれを見て笑ったメローネの周りを凍らせてやる。うわ寒い!というのは無視した。
下からは何かがぶつかるような音と衝撃が続いている。のスタンドのことを思い出して、アレが暴走する…と考えると寒気が走った。
のスタンドは伝説の鳥らしい。雷をつかさどるそれは味方から見てもあまりにもチート級の能力を持っていて、正直本気を出して戦えばvs他9人で戦っても勝てるかどうかわかったものではない。それが暴走するともなれば、地下室へこもるのは納得できた。

「初めて暴走した時はヤバかったなあ…」
「もう二度と出会いたくねぇ」
「さすがに死ぬかと思った」
「あはは、ちょー面白かったよね!」

ホルマジオ、プロシュート、イルーゾォのうんざりした声色はすごく感情がこもっていた。特にプロシュートが「二度と出会いたくない」なんていうのはよっぽどだ。

「そんなにひでーのか」
「ん?あぁ…」

再びタバコを加えたプロシュートがゆっくりした動きで煙を吐き出す。

「紙みてーに白い顔うして部屋から出てきたと思ったら腹抱えてぶっ倒れてよ。抱き起そうとしたらサンダーバードに弾き飛ばされた。1週間は体が痺れてたな…」

「サンダーバードだけ鏡の世界にとりこんだら鏡自体が帯電してアジトが燃えかけた」

「リトルフィートで小さくなってもらったけどよ、サンダーバードは手のひらサイズでもリビングに雷を落とした」

顔が引きつった。普段からあまりにもチートな能力だと思っているが、つまり全力で解き放てばそれだけの攻撃ができるということだ。

「…味方で良かったな」

満場一致の同意が得られた。