「5人分のごはんを作るのは…無理!」

夕食の席でが宣言した。
ソルベとジェラートが来てから3日目。いつも通りに頼り切りの夕食の席で、ついにが音をあげた。3人分でも精一杯だったけど、5人分となると大変。何が大変って、5人分の食材をお鍋にいれたら重たすぎてなんにもできない。炒めるのだって一苦労だ。

「たぶんみんな忘れてると思うんだけど、私まだ7歳だし、年齢に甘えてもよくない?」
「「7歳!?」」
「7歳だよ」

両手に3本と4本ずつ指を立てて差し出す。驚いているソルベとジェラートは、さっきの言葉通りがしっかりと家事をこなすので幼く見えるだけで年齢自体はもう少し上だと思っていたのだろう。

「だからね、手伝ってほしい。お鍋もフライパンも重たいんだもん」
、問題は重量だけか?」

そうだよ、とリゾットに返事をする。少し考えるようなしぐさをしてから、リゾットは立ち上がり本棚から1冊の本を取り出した。

「人間の体は電気信号で動いている。うまく刺激すれば電気で自分の筋力を高めることができるんじゃないか?」
「…リゾット天才」

目を輝かせた。は知識に貪欲だった。なんでも吸収したがるしなんにでも挑戦したがる。あれもやりたい、これもやりたいと、いつのまにかイタリア語の読み書きは完璧になっていたし料理だってレシピを見なくてもある程度のものは作れるようになった。スタンドの扱いも、他人の脳に刺激を与えたり、少しだけ刺激をあたえて心臓マッサージをしてみたり、サンダーバードの羽根から分身を作りその威力はどれくらい小さくなるのか、どれくらいの数まで分割できるのかとか、日々研究に勤しんでいるらしい。

「なるほど、やってみる。今の手伝ってほしい発言はいったん取り消します」

楽しそうに食事を再開したを見るプロシュートは複雑だった。まだ小さなに無理をさせすぎているんじゃないかという不安だ。べたべたに甘やかせば良いとも思わないが、7歳といえばまだまだ親元で大人に甘えて守られて生きている歳であるはずだ。

「無理してねーか?」
「うん、だいじょうぶ」

問いかけても、は笑うだけだ。しんどいときにはしんどいと言える子どもなのでそれほど心の底からの心配があるわけではないが、この引っかかりは父親としてのものなのだろうか。



翌朝、は5人分のスープ鍋を片手で持ち上げた。朝食のためリビングに集まっていた4人は目を丸くして驚いた。電気信号を操れば、とは言ったものの本当にできるかどうかもわからなかったし、まして一晩でできるとは思っていなかったからだ。

「筋肉を刺激してるんだけど、これ、たぶん他人にもできると思う」
「万能すぎじゃないか?」
「えへへ」

重たそうな鍋を片手で持ち上げる7歳児の姿は異様だ。まったく勢いをつけもせず、ひょいと持ち上げる。は常にアジトの周りにも電気を流し索敵をし続けているので、眠っている間以外はほとんどスタンドを発動し続けているはずだがその疲れはまったく見せない。

「なんていうか…すごいな。1人で俺ら全員分の働きができそう」
「え、そうかなあ。どうパードレ、私パッショーネに入れるかな?」
「まだはえーよ」
「え〜」

そう言って笑うと、は体格に似合わない鍋から朝食のスープをよそい始めた。