・リゾット妹が護衛チームにいてリゾットを探している5部原作沿い
・原作沿いとは言いつつもご都合主義でほとんどを妹が倒してしまいサクッとおわる



「私。よろしくね」

別任務に出ていたカプリ島へ同行できなかった私は、ぶどう畑の真ん中にある家でブチャラティたちと待ち合わせをした。見知らぬ顔が2人いて、少年の方は最近チームに入った新入りのジョルノ、もう1人はボスの娘で護衛対象のトリッシュ。娘!?と驚く私に、驚くよなあと事の重大さをわかっていないようなナランチャの笑い声がかかって、まあでも、変に気を張っても仕方がないし、女の子同士よろしくね、とトリッシュの手を取った。

「男の人ばかりなら不安だなと思っていたの。さん、よろしく」
でいいよ、トリッシュちゃん。誰かに何かされたら言ってね」

あなたみたいな女の子もギャングなの?というトリッシュは複雑そうな表情をしていたけれど、目的のためなら何だってできる私は心の底からギャングのつもりだ。命令遂行のためなら命をかけてあなたを守るよ、と冗談めかして膝をつき手の甲にキスをする。初々しく頬を染めて、からかわないでよと言う声が小さかったので、私はごめんねと笑った。



*



ボスの娘の情報を聞いて、数年前に忘れたはずの仲間の死に顔を思い出した。その娘を利用してボスに近づこうというのは相談なんかしなくても全員に共通した思いで、じゃあまずは俺が、とホルマジオは立ち上がった。娘を小さくしてポケットにでも入れて連れ帰ればいい。護衛についているチームの情報はすでに入手していて、リーダーのブチャラティはまだ若く構成員はほとんどが年下だ。子ども相手に負けるわけはねェ。

街中で見つけた護衛チームのナランチャの車には女物が積まれていた。ビンゴと思い町で戦いを繰り広げて、あと一歩と言うところで邪魔が入った。投擲されたナイフはホルマジオの二の腕に突き刺さり、まったく気にしていなかった方向からの気配に狼狽える。

「ナランチャを離しなさい」

振り返って見つけたのは小柄な女で、その手には2投目になるナイフが握られていた。2人いたのか。

「ナランチャ、私の買い物を持って先に帰りなさい」
「え、でもあれは」
「言うことをききなさい。いいから、帰るの」

チッ、と舌打ちをした。女物の買い物を見つけたからビンゴと思ったが、一緒に買い物をしてきたこの女の物かもしれない。カモフラージュの可能性もあるけれど、確率としては判断できない、イーブンだ。女の相手をするうちに、ナランチャは車で去ってしまった。もう一度舌打ちをする。けれど、間違いなく仲間である女が出てきたのなら話は早い。こいつを人質にするのだってアリだ。

「女だからってナメないでよ!」

複数本のナイフが飛んでくるがさらりとかわす。こいつはナイフを投げるしかできないのだろうか。さっき刺さった二の腕は力が入りにくいほどに食い込んではいるがそれだけだ。リトルフィートで切り付けてしまえば勝ったも同然。ナイフばかり使うということはスタンド使いでもないだろうと、余裕をもって発現させたのがあとから思えば判断ミスだった。
リトルフィートを見た女は目を見開いて距離を開け、切り付けた攻撃を余裕で回避した。

「傷つけられたら縮んじゃうんでしょう、見てたのよ」
「ナランチャがやられるところをずっと見てたのか?薄情な女だな」
「ナランチャはあなたなんかに負ける子じゃないからね」

スタンドが見えているようなのにナイフばかりで攻撃してくることが、ホルマジオには不気味だった。戦闘に向いていないのか、それともじわじわ何かを狙っているのか。わからないことほどこわいことはない。距離を置いて呼吸を整える。あれだけ動き回った癖に、女はそれほど息を乱した様子はなかった。なんだこの女は。

その時、喉に違和感があった。その違和感はすぐにせり上がり、咳き込んだ口からは真っ赤な花弁が零れ落ちる。

「…んだ、これ…」
「ブラッドローズ!」

それがスタンドの名前か。言おうとした声は喉からせりあがる花弁にのまれてでてこない。激しく咳き込んで、それから体内が冷えていくような感覚が湧き上がる。喉を抑える手に痛みが走り、そこを見ると白い薔薇が咲いていた。女は薄く笑って、そして「もう貧血で立っているのも辛いんじゃない?」と近づいてきた。白い薔薇はゆっくりと赤に染まり、指先の感覚が消えていく。この赤は、血の色だろうか。くらくらして膝をつく。

「私はむやみに殺しはしない、けど、次に追ってくるなら容赦はしないからね」

フードの奥の顔は見えないが、目が赤く光った、気がした。こんな能力の奴が敵にいたんじゃ危険すぎる。これから襲いかかるであろう仲間に何か伝えなくては。そう思い、なんとしてもその顔を見ようと切りかかる。リトルフィートの襲撃に気づいた女はあっさりとそれを避けたけれど、その拍子にフードが脱げて頭が見えた。そして息をのむ。

「リ、ゾット…?」
「え?」

見事な長い銀髪に、大きな黒に赤が光る瞳。真っ白な肌。その色はよく知ったホルマジオのリーダーに似ていた。名前を呼んだ瞬間見開かれた目は彼に似つかわしくなく表情豊かだったけれど。

「あ、あなた、リゾットを、リゾット・ネエロを知っているの」
「知ってるも何も、リゾットは…」

そこまで行って、ホルマジオの意識は途切れた。は舌打ちをして、役立たず、と暴言をはく。リゾットを知ってるこの男は何者だ。数回体を蹴って、死んではいないが意識はなく、もう動かないのを確認した。



徒歩で帰宅する途中、ナランチャが乗っていった車が走ってきた。

「アバッキオ、フーゴ、ジョルノ。どうしたの?ナランチャは無事だった?」
「あなたも無事だったんですか。負けるわけがありませんが、良かった」

乗せてくれる?と聞くと、先ほどボスから新司令が来てキーを取りに行くらしい。連戦になりますよというジョルノの言葉なんか私には関係ない。

「ナランチャ聞いたかもしれないけど、暗殺チームの人たちがトリッシュちゃんを狙ってる。きっとポンペイにも現れるよ」
「それは…はなおさら戻った方がいいのでは?」
「ううん、行く。さっき会った奴、私をみてリゾットって言った」

アバッキオとフーゴの目つきが変わる。もしかしたら、あのチームに所属しているのかもしれない。暗殺チームはその正体が一切不明、構成人数も名前もスタンドのことも何一つ情報はないから。車を運転しているのはフーゴで、その目つきはさっきよりずっと鋭い。助手席のジョルノは事情がわからないから少しだけ気になるような顔をしていて、隣のアバッキオは私の頭をぽんと1回だけ撫でた。

「言っても無駄なんだろうが、無理はすんな」
「うん、ありがと」

もしリゾットを知っているなら、私はその情報を聞き出したい。だって彼は、私の…。





サクサク続く