最近・・・キヨ君が元気ない。
どうしたんだろう?
話しかけてみたいけど、あんまりお話したことないし。
第一、好きなヒトに気軽に話しかけられるような性格はしていない。
キヨ君は笑顔の方がいいよ・・・
TWINS-S.K-
放課後。
部活が終わってから、辞書を忘れたことに気づいた。
明日英語の宿題あるのにな。
慌てて教室に戻ったら、誰かがいた。
別に気を使う必要もないんだし、普通に入っていけばいいんだけど・・・
なんか入りづらくてドアの前で待つことにした。
そしたら、中の声が聞こえてきてしまって。
その声は意中の彼、キヨ君のもので。
さらにその内容が・・・最近キヨ君が元気がない原因についてだったから。
・・・つい、それを聞いてしまった。
*
「千石・・・お前、最近沈んでないか?」
「あ〜、わかっちゃった?」
「・・・無理して笑うな。痛々しい」
「南には隠しごとできないんだなあ・・・」
「で、なにがあったんだよ?」
「・・・・・・がさ、」
「ちゃん・・・?どうかしたのか?」
「うん・・・明日、手術なんだ・・・」
「えっ・・・!!」
「成功率は40%だって。もし成功すれば、もう二度と病気は再発しない。
でももし失敗したら・・・は・・・、」
「・・・もういい、悪かったな、そんなこと聞いて」
「ううん。南には話そうと思ってたから」
「そうか・・・。明日は来るのか?」
「に付いててあげたいから。俺のラッキーを分けてあげないといけないしね」
「そうか・・・成功、するといいな」
「きっと成功するよ。・・・ありがと」
・・・何?なんの話?
よくわからなくて混乱していたら、2人が出てくる音がしたから慌てて隠れた。
キヨ君の泣きそうな顔を見たのは、これが最初で最後。
なんなんだろう。
ちゃんって誰?
この時の私の疑問が解決するのは、一週間後。
*
次の日。
キヨ君は学校を休んだ。
先生は「家庭の用事」としか言っていなかった。
――ちゃん、って子のところにいるんだろうな。
みたこともない<ちゃん>に嫉妬した。
私がどんなに頑張っても、その<ちゃん>には敵わないんだろう。
あのキヨ君を心配で泣かせられるほど大切な存在。
私は、ブサイクだし。
目立たないし。
南君みたいに「地味」だし。(南君、ごめんなさい)
一日中、キヨ君のことと<ちゃん>のことを考えていた。
おかげで、授業中ぼーっとしてしまい先生には怒られるし、課題もだされてしまったけど、そんなことはどうでもよかった。
キヨ君は今、何してるのかな。
ちゃんってどんな子なんだろう。
考えれば考えるほど深みにはまっていくような気がして、それでも考えるのをやめることはできなかった。
私はこんなにもキヨ君のことが好きなんだ。
改めて思い知った。
*
次の日に学校に来たキヨ君は、南君と楽しそうに笑っていて、すごく安心した。
その次の日も、キヨ君は変わらずにこにこしたままだった。
それからさらに数日後。
「席につけー」
ガラツ、と戸を開けて入ってきた先生の声に、みんながザワザワと自分の席に戻っていく。
「今日は転校生を紹介する。かなりかわいいぞ」
フッ、とキヨ君の方を見た。
可愛い女の子と聞けば黙っていないと思ったから。
でも、その予想ははずれて、キヨ君は嬉しそうにニコニコしているだけだった。
「入ってこい」
「はい・・・」
その子がはいってきた瞬間、教室が静まり返った。
すごく綺麗。
第一印象は、それ。
「千石、清純の双子の妹です。病気で、最近まで入院していました。よろしくお願いしますっ」
自己紹介をした時の、凛として透き通った鈴のような可愛い声。
ふわりと笑ったときの、天使みたいな笑顔。
やたら目立つ、主張しすぎな――・・・なのに不自然じゃない、キヨ君と同じオレンジの髪。
それはサラサラと腰までまっすぐに伸びて。
キヨ君の双子の妹。名前は<>
あの話は、この子のことだったんだ。
「先生、は俺の隣でいいよね?」
「おー」
「キヨ兄・・・」
ちゃんはキヨ君の方を見て、さっきとは違う、「特別」な笑顔を見せた。
「じゃあHRを始める。出席をとるぞー」
席についたちゃんは、キヨ君と楽しそうに何か話している。
そこに南君も加わって、またちゃんは楽しそうに笑っていて。
・・・あの、ちゃんがいる場所に私がいられたなら、どんなにいいだろう。
絶対に無理だけど、それでも望んでしまう。
無意識に流れ出た涙を隠したくて、私は保健室に行くと言って先生の返事も聞かずに教室を飛び出した。
・・・・・・悔しい。
悔しい悔しい悔しい。
どうして可愛い顔に生まれてこれなかったんだろう?
・・・もう考えたくもない。
私は、屋上で横になり、ただただ止まらない涙を流し続けた。
そのまま、涙と一緒に私も流れ落ちてしまえばいいのに。
でも、そんなことありえなくて。
気づいたら、もう空は赤く染まっていた。
***
言訳。
多分初めて公開した夢です。中学生の時に書いたんだと思う。
メルマガ配信だったのでこれで6話くらいの中編で連載していました。
これより前にもいくつか書いてるんだけどもうデータが残ってません。
入院してたちゃんの髪がオレンジだったのは、こっそり病室を抜け出して染めたのでしたーみたいなどうでも良い裏設定がありました。
どうしたんだろう?
話しかけてみたいけど、あんまりお話したことないし。
第一、好きなヒトに気軽に話しかけられるような性格はしていない。
キヨ君は笑顔の方がいいよ・・・
TWINS-S.K-
放課後。
部活が終わってから、辞書を忘れたことに気づいた。
明日英語の宿題あるのにな。
慌てて教室に戻ったら、誰かがいた。
別に気を使う必要もないんだし、普通に入っていけばいいんだけど・・・
なんか入りづらくてドアの前で待つことにした。
そしたら、中の声が聞こえてきてしまって。
その声は意中の彼、キヨ君のもので。
さらにその内容が・・・最近キヨ君が元気がない原因についてだったから。
・・・つい、それを聞いてしまった。
*
「千石・・・お前、最近沈んでないか?」
「あ〜、わかっちゃった?」
「・・・無理して笑うな。痛々しい」
「南には隠しごとできないんだなあ・・・」
「で、なにがあったんだよ?」
「・・・・・・がさ、」
「ちゃん・・・?どうかしたのか?」
「うん・・・明日、手術なんだ・・・」
「えっ・・・!!」
「成功率は40%だって。もし成功すれば、もう二度と病気は再発しない。
でももし失敗したら・・・は・・・、」
「・・・もういい、悪かったな、そんなこと聞いて」
「ううん。南には話そうと思ってたから」
「そうか・・・。明日は来るのか?」
「に付いててあげたいから。俺のラッキーを分けてあげないといけないしね」
「そうか・・・成功、するといいな」
「きっと成功するよ。・・・ありがと」
・・・何?なんの話?
よくわからなくて混乱していたら、2人が出てくる音がしたから慌てて隠れた。
キヨ君の泣きそうな顔を見たのは、これが最初で最後。
なんなんだろう。
ちゃんって誰?
この時の私の疑問が解決するのは、一週間後。
*
次の日。
キヨ君は学校を休んだ。
先生は「家庭の用事」としか言っていなかった。
――ちゃん、って子のところにいるんだろうな。
みたこともない<ちゃん>に嫉妬した。
私がどんなに頑張っても、その<ちゃん>には敵わないんだろう。
あのキヨ君を心配で泣かせられるほど大切な存在。
私は、ブサイクだし。
目立たないし。
南君みたいに「地味」だし。(南君、ごめんなさい)
一日中、キヨ君のことと<ちゃん>のことを考えていた。
おかげで、授業中ぼーっとしてしまい先生には怒られるし、課題もだされてしまったけど、そんなことはどうでもよかった。
キヨ君は今、何してるのかな。
ちゃんってどんな子なんだろう。
考えれば考えるほど深みにはまっていくような気がして、それでも考えるのをやめることはできなかった。
私はこんなにもキヨ君のことが好きなんだ。
改めて思い知った。
*
次の日に学校に来たキヨ君は、南君と楽しそうに笑っていて、すごく安心した。
その次の日も、キヨ君は変わらずにこにこしたままだった。
それからさらに数日後。
「席につけー」
ガラツ、と戸を開けて入ってきた先生の声に、みんながザワザワと自分の席に戻っていく。
「今日は転校生を紹介する。かなりかわいいぞ」
フッ、とキヨ君の方を見た。
可愛い女の子と聞けば黙っていないと思ったから。
でも、その予想ははずれて、キヨ君は嬉しそうにニコニコしているだけだった。
「入ってこい」
「はい・・・」
その子がはいってきた瞬間、教室が静まり返った。
すごく綺麗。
第一印象は、それ。
「千石、清純の双子の妹です。病気で、最近まで入院していました。よろしくお願いしますっ」
自己紹介をした時の、凛として透き通った鈴のような可愛い声。
ふわりと笑ったときの、天使みたいな笑顔。
やたら目立つ、主張しすぎな――・・・なのに不自然じゃない、キヨ君と同じオレンジの髪。
それはサラサラと腰までまっすぐに伸びて。
キヨ君の双子の妹。名前は<>
あの話は、この子のことだったんだ。
「先生、は俺の隣でいいよね?」
「おー」
「キヨ兄・・・」
ちゃんはキヨ君の方を見て、さっきとは違う、「特別」な笑顔を見せた。
「じゃあHRを始める。出席をとるぞー」
席についたちゃんは、キヨ君と楽しそうに何か話している。
そこに南君も加わって、またちゃんは楽しそうに笑っていて。
・・・あの、ちゃんがいる場所に私がいられたなら、どんなにいいだろう。
絶対に無理だけど、それでも望んでしまう。
無意識に流れ出た涙を隠したくて、私は保健室に行くと言って先生の返事も聞かずに教室を飛び出した。
・・・・・・悔しい。
悔しい悔しい悔しい。
どうして可愛い顔に生まれてこれなかったんだろう?
・・・もう考えたくもない。
私は、屋上で横になり、ただただ止まらない涙を流し続けた。
そのまま、涙と一緒に私も流れ落ちてしまえばいいのに。
でも、そんなことありえなくて。
気づいたら、もう空は赤く染まっていた。
***
言訳。
多分初めて公開した夢です。中学生の時に書いたんだと思う。
メルマガ配信だったのでこれで6話くらいの中編で連載していました。
これより前にもいくつか書いてるんだけどもうデータが残ってません。
入院してたちゃんの髪がオレンジだったのは、こっそり病室を抜け出して染めたのでしたーみたいなどうでも良い裏設定がありました。