くだらないなんて言わないで、私にとっては大切な約束。
「えっ、休み!?」
おう、と嬉しそうに笑ったブン太はやっぱりかっこいい。
放課後、いつものようにどこで待っているかを伝えようとした時だった。
「めっずらしいね、どうしたの?」
「緊急のコート整備だと。どうする、どっか寄ってく?」
ケイタイを閉じたり開いたりしながら私を見る。
何か食べて帰ろうか。そのあとブン太の家行きたいなあ。
そう言ったら、時間は短いぞーと言って私の手を取って歩き出す。
握った手があったかくて、すごく幸せだと思った。
「落ちるなよー」
「転ぶなよー」
ブン太の自転車の後ろに乗って、そんなくだらないやりとりを交わす。
そのあとにまたどちらからともなく笑って、しゅぱーつと声をそろえる。
部活で鍛えているブン太は、こんなに可愛いのにとても頼もしい。
世界中のどこを探したって、こんな完璧な彼氏も幼馴染も見つかるはずない。
大きな背中に体を預けて、目を閉じる。あったかい。
眠いか?と言ったブン太の声が体から響いて、すごくドキドキした。
「ブン太の家久しぶりだ」
「遊ぶの久しぶりだからな」
そう言うと、ちょっとばつの悪そうな顔をして「悪かった」とあやまった。
何が、っていうのはきっと、あんまり構ってあげられなくて、ってことだ。
そんなの気にしてないのに。ブン太のこと大好きだから、そんなの気にならない。
毎日一緒に帰れるだけでもすごく嬉しいよ、というと、柔らかい笑顔をくれた。
「俺さ、以上の彼女っていないと思う」
「それ、私もさっき思った」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。世界中のどこ探しても見つかんない最高の彼氏。で、幼馴染」
「はは、さんきゅ」
くしゃ、と頭を撫でて私の視界を遮るのは、照れてる時のブン太の癖だ。
向こうから見えていなくても、こっちからは結構見えるんだってこと気づいてないんだろうか。
そういう時のはにかんだ笑顔、すっごくかわいい。男の子なのにな。
「なんか食う?」
「まだ食べるの?さっきケーキ3つも食べたのに」
「あんなんじゃ足りない。ちょっと待ってて」
とたとたと階段を降りる音。一階からブン太の話し声が聞こえる。
その中に弟たちの声が混ざった。これはしばらく戻ってこないかも。
久しぶりに訪れたブン太の部屋。男の子の部屋にしてはとても綺麗。
きっと物が少ないからだ。机とベッド、小さな本棚。それだけ。
何かないかな、と覗きこんだ本棚の端に、見覚えのある表紙を見つけた。
[さくら幼稚園 卒園記念アルバム]
懐かしい、私とブン太が通ってた幼稚園だ。
見ても良いよね、と思って開くと、中に少し厚めの冊子がはさまっていた。新しい。
無地の表紙。裏にも何も書いていない。
ハガキくらいのサイズのそれは、何処か開いてはいけない雰囲気があった。
ブン太はまだ戻って来る気配がない。下で弟達と話す声が聞こえる。
そっと開くと、中には綺麗な文字が並んでいた。書かれたのはきっと最近。
日付があって、その下に数行の文章。そのあとにまた日付、文章…
これは日記だ。きっとブン太の。年号は何年か前。中3のころ。
見ちゃいけないと思うほど人間の好奇心は膨れ上がるものだと思う。
バレなきゃ大丈夫、バレなきゃ大丈夫。
もう一度ブン太が帰ってこないのを確認して、私は日記を読み始めた。
「えっ、休み!?」
おう、と嬉しそうに笑ったブン太はやっぱりかっこいい。
放課後、いつものようにどこで待っているかを伝えようとした時だった。
「めっずらしいね、どうしたの?」
「緊急のコート整備だと。どうする、どっか寄ってく?」
ケイタイを閉じたり開いたりしながら私を見る。
何か食べて帰ろうか。そのあとブン太の家行きたいなあ。
そう言ったら、時間は短いぞーと言って私の手を取って歩き出す。
握った手があったかくて、すごく幸せだと思った。
「落ちるなよー」
「転ぶなよー」
ブン太の自転車の後ろに乗って、そんなくだらないやりとりを交わす。
そのあとにまたどちらからともなく笑って、しゅぱーつと声をそろえる。
部活で鍛えているブン太は、こんなに可愛いのにとても頼もしい。
世界中のどこを探したって、こんな完璧な彼氏も幼馴染も見つかるはずない。
大きな背中に体を預けて、目を閉じる。あったかい。
眠いか?と言ったブン太の声が体から響いて、すごくドキドキした。
「ブン太の家久しぶりだ」
「遊ぶの久しぶりだからな」
そう言うと、ちょっとばつの悪そうな顔をして「悪かった」とあやまった。
何が、っていうのはきっと、あんまり構ってあげられなくて、ってことだ。
そんなの気にしてないのに。ブン太のこと大好きだから、そんなの気にならない。
毎日一緒に帰れるだけでもすごく嬉しいよ、というと、柔らかい笑顔をくれた。
「俺さ、以上の彼女っていないと思う」
「それ、私もさっき思った」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。世界中のどこ探しても見つかんない最高の彼氏。で、幼馴染」
「はは、さんきゅ」
くしゃ、と頭を撫でて私の視界を遮るのは、照れてる時のブン太の癖だ。
向こうから見えていなくても、こっちからは結構見えるんだってこと気づいてないんだろうか。
そういう時のはにかんだ笑顔、すっごくかわいい。男の子なのにな。
「なんか食う?」
「まだ食べるの?さっきケーキ3つも食べたのに」
「あんなんじゃ足りない。ちょっと待ってて」
とたとたと階段を降りる音。一階からブン太の話し声が聞こえる。
その中に弟たちの声が混ざった。これはしばらく戻ってこないかも。
久しぶりに訪れたブン太の部屋。男の子の部屋にしてはとても綺麗。
きっと物が少ないからだ。机とベッド、小さな本棚。それだけ。
何かないかな、と覗きこんだ本棚の端に、見覚えのある表紙を見つけた。
[さくら幼稚園 卒園記念アルバム]
懐かしい、私とブン太が通ってた幼稚園だ。
見ても良いよね、と思って開くと、中に少し厚めの冊子がはさまっていた。新しい。
無地の表紙。裏にも何も書いていない。
ハガキくらいのサイズのそれは、何処か開いてはいけない雰囲気があった。
ブン太はまだ戻って来る気配がない。下で弟達と話す声が聞こえる。
そっと開くと、中には綺麗な文字が並んでいた。書かれたのはきっと最近。
日付があって、その下に数行の文章。そのあとにまた日付、文章…
これは日記だ。きっとブン太の。年号は何年か前。中3のころ。
見ちゃいけないと思うほど人間の好奇心は膨れ上がるものだと思う。
バレなきゃ大丈夫、バレなきゃ大丈夫。
もう一度ブン太が帰ってこないのを確認して、私は日記を読み始めた。