私たちはギャングで、暗殺者で、今まで生きてきて犯した犯罪は数えきれない。盗みも、暴力も、殺人も数えきれないだけやってきた。だから倫理観なんてものもすっからかんになっていて、同じチームで仕事をする仲間同士で同じ女を抱くなんていう普通だったら吐き気を催すようなことだって、平気でしてしまう。抱かれる方の女だって、なんの抵抗もせず複数の仲間を相手に身体を許してしまう。

こんな仕事だから、外で発散してこようと思っても気にすることが多すぎて面倒くさいというのも理由の1つだ。昔、メローネが適当にひっかけてきた女がストーカーになった時は大変だった。私をメローネの彼女だと勘違いして襲いかかってきたあの顔は、ただの一般人とは思えないほど狂気にゆがんでいて、正直なめた態度で刃物を振りかざすチンピラよりずっと怖かった。



まあ、そんな感じで、私も今日はちょっとだけそういうのを発散したい気分だったので、誰にしようかなあと廊下に並んだ扉の前をうろついていたところで、階段を上がってきたプロシュートに呼び止められた。

「何やってんだ」
「あ、プロシュート。今夜はちょっとそういう気分でね、誰の部屋にしようかな〜って」
「今目の前に俺がいるのに、他の男の部屋に入る気か?」

腰に手をあてて、片足に体重をかけて立つ姿はパーフェクトに美しい。プロシュートは女性の扱いに手馴れていて、良い立場の女を良いように落として情報を抜き取ったりなんかする仕事がとても得意だ。その美しい顔で見つめられたら、そりゃあ誰だってイチコロというもの。私も例に漏れずプロシュートの顔は、顔は、大好きだったので、もう心は決まったけれど少しだけ悩んだふりをして、それから差し出された手を取ってみた。口の端を釣り上げて作る笑顔はとびきりに好みで、こんな、恋人とか夫婦とかそんな形に縛られず、けれどセックスフレンドや商売女みたいな割り切った薄っぺらい関係でもなく、仲間として心のつながりを持って抱かれることができる私って、とっても幸せなんじゃないだろうか。

「今日は激しいのと優しいの、どっちがイイんだ?」

部屋に入った私がまっすぐにベッドに歩み寄り腰掛けるのを見て、特徴的なスーツを脱ぎながら言った。そのセリフと、たくましい身体が惜しげもなく晒されることに、もう何もしていないのに満たされたような気持ちになってしまった。もうこのまま抱き合ってただ眠るのでも十分かも。でも、それじゃあもったいない。



「わたし、気持ちいいのがいい」

すでにすごく幸せで満たされているので、できるだけ甘えた声を出してみる。プロシュートが何にも我慢できなくなっちゃうような、彼の大好きな甘え方で。少しだけ見開いた目がすっと細くなって、それからちろりと赤い舌がのぞく。カチリとスイッチが入った音が聞こえるみたいだ。私のことを、獲物を見つけた野生の動物みたいな目でみる、その視線がたまらない。セクシーで余裕のある大人の男が、私みたいな年下に夢中になる姿に、私は結局思い切り乱れてしまうのだった。