「おはよう、メローネ」

朝目が覚めて、私がまず最初にすることはメローネへの挨拶だった。まだ少しだけ空気が冷えるから布団から出るのは勇気がいるけど、思い切って飛び出してカーテンを開ける。丘の上にあるこの家は街をずっと遠くまで見渡せて、今日の青い空は雲一つなく爽やかにどこまでもずーっと続いていた。おはようメローネ。今日はとっても良い天気。開け放った窓から入り込んで家の中のこもった空気が少しずつ入れ替わっていくから、私は窓をそのままにキッチンへと急いだ。

2人分のカップを取り出して、2人分のエスプレッソを淹れる。私はこれがあまり得意じゃあなかったけど、一緒に住んでいるメローネが上手にいれるのをみて一生懸命覚えたんだ。こんなにおいしく入れられるようになった。かわいい絵なんか描いちゃったりしてね。私の絵があんまりにもヘタだから、メローネとは毎朝このイラストは何でしょう?って笑い合う習慣になった。今日はね、ホルマジオが拾ってきて、1週間で逃げられたあの白と黒のまだらの猫です。メローネは覚えてるかな。本当は白い猫にしたかったけど、失敗してまだらになっちゃったの。きっとメローネは、「相変わらずは絵が下手だなあ」っておかしそうに笑うんだ。もう、メローネだって別にすっごく上手ってわけじゃないでしょう。むっとほっぺを膨らませたら、まんまるになったほっぺにキスをしてくれる。それが欲しくて膨れてるってわけじゃあないからね。…これは少しだけ、嘘だけど。

メローネはよく布団を跳ね上げるから、私は気づくたびにかけなおしてあげるんだ。私の眠りは浅いから、すぐに気づいてしまうんだよ。意外なことに1度眠ってしまうとなかなか起きないメローネは、私の苦労なんてしったこっちゃないだろうけど、結構大変なんだからね。私服とおんなじに寝間着も薄いからお腹を壊したらどうしようって、私はいつも心配だった。人の気もしらないですやすやと眠っているメローネ。起きてる時よりずっと幼く見えてかわいくて、それでつい、許してしまう。

朝ごはんを用意しよう。私もメローネも、朝はあんまり食べられないタイプ。だからトーストにジャムを塗るだけの簡単なものがほとんどだった。今日はいちごのジャムにしようかな。家の裏の畑に植えたいちごをとってきた、昨日の夜つくったお手製のジャムだよ。砂糖はいっぱい。甘くておいしいから、きっとメローネも気に入ってくれると思う。

そろそろ冷えて来たから、窓はしめよう。寒いのってあんまり得意じゃないんだ、私。なんだか心がざわついて、もやもや気持ち悪くなる。どうしてかわからないけれど、空気が冷えると私はどんどん、どんどん…気持ちが暗くなっていく。同じように夕暮れ時も苦手だ。なんだか心がざわついて、どうしようもなくなってしまう。どうしてなのかわからないけど、でもメローネがいるから平気だよ。いつも一緒にいてくれてありがとう。

今日は天気が良いから、お洗濯もしてしまおうか。ざぶざぶあらってすっきりいいにおいの服に袖を通すと気持ちいいよね。血で汚れた衣服を洗うのは大変だけど、最近はあんまりメローネが服を汚さないからちょっとだけ楽だよ。

ねえメローネ、洗濯物を干したら、一緒に買い物に行こうか。お昼を過ぎたらきっとあったかいよ。この前ねえ、あの、私たちのアジトをでて街に向かう道の途中にジェラート屋さんができたの。ううん、暖かいって言っても、外で食べるにはまだ寒いだろうか。どうかなあ、でも、一緒にいればきっとあったかいよ。だからさ、ねえ、行こう?



、おはようございます」
「あらジョルノ、おはよう。チャイムくらい鳴らすべきよ、私とメローネがいちゃついていたらどうするつもりなの?」

ジョルノったらいつもそうだ。困ったボスよね、ねえ、メローネ。そうだね、ってメローネは私に笑いかけて、それからジョルノに「何の用だい?」って声をかけた。ジョルノはそれを聞いていなくって返事をしないから、いつだってメローネは不機嫌になる。いつまでもそうやって拗ねてないで…ねえメローネ、なんでメローネはジョルのにあたりが強いんだっけ。なんか嫌ってるよね。戦って、負けたから、…あれ、でもメローネはここにいるわよね。なんだか私、おかしいみたい。

「…メローネ、メローネ?ちゃんとここにいるよね、メローネ。…メローネ?」
(どうしたの、。俺はここにいるよ)

「よかった、ちゃんといる。ねえメローネ、メローネはなんでジョルノが嫌いなの?」
(…そう見えたかい?)

あれ、勘違いだったかしら。まあいいわ、今日はなんだか気分がいいから。ねえジョルノ、よかったらジョルノも一緒に行きましょうか。



1人で住んでいる家で



、メローネは1年も前に、僕が…)