どんよりとした空気の室内。その空気を作り出している普段はとっても偉そうな東海道は、現在膝を抱えて落ち込んでいた。みんなが入れ換わり立ち替わり慰めようと試行錯誤するも、最終的にはさくらんぼの茎が結べるか結べないかという話題に落ち着いてしまう。できない東海道の機嫌は悪くなる一方で、山陽に無理矢理口に入れられた茎を噛んでしまったのか先ほどから反応までなくなってしまった(ほんとめんどくさい)。
もう何をしても無反応な東海道を持てあましたのか、室内の大半が縋るような目で私を見る。あまりにくだらないので我関せず、といったかんじでスルーしていたのだが、これはもうそういうわけにはいかないのだろうか。だってめんどくさいよね、いい歳した大人が台風がこわくて膝を抱えるなんて笑い話以外の何物でもない。もしこの部屋に突然宇都宮が入って来るとかいうアクシデントでもあれば良いんだけど、と不吉なことを考えていると、制服の袖がつい、と引っ張られた。
「せんぱい、とうかいどうせんぱいがもうだめです…」
もうだめ、という言葉通り、もうだめだという顔をした長野が見上げてくる。仮にも尊敬する先輩に向かって「もうだめ」ってどうなんだろう。小さくため息をつき長野の頭をくしゃ、と撫でると、小さな体(それでも重たいけど)を膝の上に向かい合わせに抱えあげる。隣に座っていた上越が面白いものでも見るような目をしていたのは無視して。
「そうだね、東海道はもうだめだねー。長野はあんな風になっちゃだめだよ?」
雨にも風にも痴漢にも事故にも故障にも蛇にも、何にも負けない新幹線にならないとね、東海道とは違って。後半を特に強調して言うと、向こうのソファーに座る東海道がちらりと顔をあげた。気がつかないふりをして更に続ける。
「ほら、東海道って貧弱だからさ。稼いでるからってケチくさいのも足腰弱いのもどうかと思うんだ。長野は立派な北陸新幹線になるんだよ?」
「はい!せんぱいっ」
元気の良い返事に目を細めその頭を撫でる。嬉しそうにする長野が可愛くてぎゅう、と抱きしめようとしたその時。
「・・・いつまでそこにいる」
やっと立ち上がった東海道が、長野の真後ろ、つまり私の正面に立っていた。びくりと顔をあげた長野が「とうかいどうせんぱい、」と名前を呼びきるか微妙なタイミングで体を抱き上げると、隣の上越の膝の上におろす。重たいんだけど、とからかうように上越が言うと長野はごめんなさいじょうえつせんぱいっ!と慌てて降りようとする。冗談だよ、なんて笑いながら持っていた本を横に置き長野を抱きよせる上越をこのショタコン、なんて思ったのは内緒にしておく。
「、お前は誰のものだと思っている」
「誰のものって、私は私のものだけど」
何言ってるの?というような目で見てやれば、東海道の不機嫌さは目に見えて増幅したようだった。それを見てあんまり煽らないでよ、と小声で言う秋田には悪いけど、たまには良いと思う。
「そんなにすぐ落ち込むしすぐ怒るような人とはもう付き合ってられないかもなあ」
あきれたような口調で言い、ころりと隣にいる上越の肩に頭を預ける。予想外だったのかちょっと驚いた顔の上越に、せんぱい、と咎めるような声を上げる長野。血管が切れそうな勢いで拳を握る東海道が目の前にいて、さすがに可哀想かな、と思ったら。
「…ふん、お前が私から離れられるわけがないだろう」
「何そのじし、っわ」
自信、と言いかけた言葉を飲み込んで、ふわりと体が浮く。抱きあげられたのだとわかったのは一瞬後で、体越しに伝わる「少し休む」という東海道の声。動揺する頭を総動員してはじき出した結論に、じたばたと暴れる。
「降ろして!私貨物じゃない!」
「、あんまり暴れるとうさぎのパンツ見えるよ」
肩に抱えられるように抱きあげられた私が足をあげると、短いスカートはめくれてしまうのが自然だ。無理矢理首を向けると、楽しそうににやにやしている上越と真っ赤になって顔をそむける長野。ああもう、何この恥ずかしい状況。室内に視線を巡らせても、誰一人目を合わせてはくれない。そして
「あんまり煽るなって、言ったからね」
ぼそりと呟いたのは多分秋田。うえ、ごめん助けて。そういう間もなく抱えられたまま部屋を出た。出たというよりは出されたという方が正しいけれど。
「東海道、何処行くの」
「私の部屋だ」
文句あるか?という東海道はすっかりいつも通りで、ただ違うのはいつもに加えてヒステリックじゃなく怒っていること。ああどうしよう、調子に乗るんじゃなかったなあなんて思っても後の祭り。とりあえず今は、明日の業務に支障をきたさない方法を考えよう。
[台風がやってきます]
タイトル付けるのってびっくりするくらい苦手!
誰夢だろうと上越にくっつきたいのは愛です、愛(変態的な)
もう何をしても無反応な東海道を持てあましたのか、室内の大半が縋るような目で私を見る。あまりにくだらないので我関せず、といったかんじでスルーしていたのだが、これはもうそういうわけにはいかないのだろうか。だってめんどくさいよね、いい歳した大人が台風がこわくて膝を抱えるなんて笑い話以外の何物でもない。もしこの部屋に突然宇都宮が入って来るとかいうアクシデントでもあれば良いんだけど、と不吉なことを考えていると、制服の袖がつい、と引っ張られた。
「せんぱい、とうかいどうせんぱいがもうだめです…」
もうだめ、という言葉通り、もうだめだという顔をした長野が見上げてくる。仮にも尊敬する先輩に向かって「もうだめ」ってどうなんだろう。小さくため息をつき長野の頭をくしゃ、と撫でると、小さな体(それでも重たいけど)を膝の上に向かい合わせに抱えあげる。隣に座っていた上越が面白いものでも見るような目をしていたのは無視して。
「そうだね、東海道はもうだめだねー。長野はあんな風になっちゃだめだよ?」
雨にも風にも痴漢にも事故にも故障にも蛇にも、何にも負けない新幹線にならないとね、東海道とは違って。後半を特に強調して言うと、向こうのソファーに座る東海道がちらりと顔をあげた。気がつかないふりをして更に続ける。
「ほら、東海道って貧弱だからさ。稼いでるからってケチくさいのも足腰弱いのもどうかと思うんだ。長野は立派な北陸新幹線になるんだよ?」
「はい!せんぱいっ」
元気の良い返事に目を細めその頭を撫でる。嬉しそうにする長野が可愛くてぎゅう、と抱きしめようとしたその時。
「・・・いつまでそこにいる」
やっと立ち上がった東海道が、長野の真後ろ、つまり私の正面に立っていた。びくりと顔をあげた長野が「とうかいどうせんぱい、」と名前を呼びきるか微妙なタイミングで体を抱き上げると、隣の上越の膝の上におろす。重たいんだけど、とからかうように上越が言うと長野はごめんなさいじょうえつせんぱいっ!と慌てて降りようとする。冗談だよ、なんて笑いながら持っていた本を横に置き長野を抱きよせる上越をこのショタコン、なんて思ったのは内緒にしておく。
「、お前は誰のものだと思っている」
「誰のものって、私は私のものだけど」
何言ってるの?というような目で見てやれば、東海道の不機嫌さは目に見えて増幅したようだった。それを見てあんまり煽らないでよ、と小声で言う秋田には悪いけど、たまには良いと思う。
「そんなにすぐ落ち込むしすぐ怒るような人とはもう付き合ってられないかもなあ」
あきれたような口調で言い、ころりと隣にいる上越の肩に頭を預ける。予想外だったのかちょっと驚いた顔の上越に、せんぱい、と咎めるような声を上げる長野。血管が切れそうな勢いで拳を握る東海道が目の前にいて、さすがに可哀想かな、と思ったら。
「…ふん、お前が私から離れられるわけがないだろう」
「何そのじし、っわ」
自信、と言いかけた言葉を飲み込んで、ふわりと体が浮く。抱きあげられたのだとわかったのは一瞬後で、体越しに伝わる「少し休む」という東海道の声。動揺する頭を総動員してはじき出した結論に、じたばたと暴れる。
「降ろして!私貨物じゃない!」
「、あんまり暴れるとうさぎのパンツ見えるよ」
肩に抱えられるように抱きあげられた私が足をあげると、短いスカートはめくれてしまうのが自然だ。無理矢理首を向けると、楽しそうににやにやしている上越と真っ赤になって顔をそむける長野。ああもう、何この恥ずかしい状況。室内に視線を巡らせても、誰一人目を合わせてはくれない。そして
「あんまり煽るなって、言ったからね」
ぼそりと呟いたのは多分秋田。うえ、ごめん助けて。そういう間もなく抱えられたまま部屋を出た。出たというよりは出されたという方が正しいけれど。
「東海道、何処行くの」
「私の部屋だ」
文句あるか?という東海道はすっかりいつも通りで、ただ違うのはいつもに加えてヒステリックじゃなく怒っていること。ああどうしよう、調子に乗るんじゃなかったなあなんて思っても後の祭り。とりあえず今は、明日の業務に支障をきたさない方法を考えよう。
[台風がやってきます]
タイトル付けるのってびっくりするくらい苦手!
誰夢だろうと上越にくっつきたいのは愛です、愛(変態的な)