「けーよー、着たよ!」

「うわ、かわいい!」

「えへへー」

これすごく可愛いね、と回って見せる。その格好はどこからどう見ても魔女っ子だ。黒いミニのワンピースに、大きく開いた背中はオレンジのリボンで編み上げになっている。のために用意したんだ、と笑うと、わかりやすく照れたように顔を伏せる。

「あ、ありがとうね」

「ううん。そんな可愛いが見れるなら安いもんだよ」

「ねえ、あんまり可愛いって言わないで…」

恥ずかしいよ、とそっぽを向いてしまうが愛しくて、つい手を伸ばしてしまう。さらさらの髪が指の間をすり抜けて気持ちいい。恥ずかしそうにこちらに向き直したは僕の姿を見ると、また恥ずかしそうに顔を伏せた。

「け、京葉も、かっこいいよ?」

「ありがとう」

と対になるように、全身真っ黒の魔法使い。今日はハロウィンだから、2人でみんなのとこに出向いてお菓子をもらい歩こうという作戦だった。可愛いが仮装すれば誰だってお菓子を差し出す。埼京なんて喜んで差し出すだろうし、京浜東北はこどもをあしらうような態度でお菓子を用意しているに違いない。宇都宮や高崎だってには甘いし、武蔵野は公然とライバル宣言をしてくるほどだ。まあ、誰が何と言おうとは僕のだけども。

「ねえ、やっぱりみんなのとこ行くのやめよっか」

「…なんで?」

本当にわからない、といったように首をかしげる。そんな無防備な可愛い子を、獣の中に連れ込むなんてもったいない。

「こんな可愛い、誰にも見せたくないな?」

言うと、もともと赤らめていた頬が真っ赤に染まる。そういうこと言わないでほしいんだけど…と小さな声でもごもごと言うと、は僕の服の裾をぎゅ、と掴んだ。

「で、でもね、私もこんなかっこいい京葉、誰にも見せたくないかな…なんて、」

だんだん弱くなっていく語尾に、うっかり口元が緩むのがわかった。ああもうどうしてくれるのだろう、この可愛い可愛い僕の彼女は!





(欲目と欲目とした下心)