「…レン?そこにいるの?」

ふと目が覚めると、眠る前と同じ場所に人の気配があった。離れないで、と言えば、レンはいつまでもそこにいる。自分の意思がないみたいに、レンは私の命令に忠実。とても良い召使。

「眠れませんか」

「ゆめ…ゆめを見たわ」

ベッドの脇に腰かけたレンの手を引いて自分の額に乗せる。ひやりとしてとても気持ちがいい。ほっとして表情が緩んだ私とは対照的に、レンの表情が曇った。

「熱い」

「はじめてレンに会ったときの夢を見てた」

「はあ…」

会話をする気のない私に小さな溜息をつくと、もう4年もおそばにいるのですね、とレンが言った。時間がたつのはとても速いわ、と返すと、王女は4年たっても全然変わりませんと笑われた。

「失礼ね、少しは成長したわ。…ほら」

強引にレンの手を引くと、重ならないようにころんと横になった。布団の端を持ち上げるとするりと入り込んでくる。入りなさいよ、寒いでしょう。そんなやさしい意味がある行為じゃないことは今さらで、そういうところが子どもなんだけどな、と呆れたように服に手を入れるレンの手はすごく冷たかった。

「っ、冷たい」

「ずっとそこにいましたから」

「もう少し暖かい服装をしたらどうなの」

「王女が温めてくださるのでしょう?」

「ば、かじゃないの…」

そう言いながらもレンの手は止まらない。ひらひらして着るのも脱ぐのも面倒な服を、器用に脱がせる。自分でもうまくいかないのにどうして、と少し不満そうな顔をすると、それを悟ったレンが、またくすくす笑った。

「王女は変わりません。ずっと子どものままです」

「レン…王女っていわないで」

(あいしてるよ、リン)