「東海道、誕生日おめでとう!」



部屋に入るなり響いたクラッカーに、真っ先に祝いの声をあげたのは埼京だ。目をぱちぱちさせて驚く東海道に、部屋にいた全員が口々におめでとう、と声をかける。
そこでやっと、今日は14日なのだと思い至り、自分の誕生日を忘れていたことに苦笑した。いいかげん長い時間を走りすぎて、時間の誕生日など気にすることもなくなっていたのだが、こうして祝われるとやはり嬉しい。
口々に祝いの言葉を告げながら、東海道の前にプレゼントが詰まれていく。埼京はこの間東海道が欲しいと言ったゲーム、高崎からは手作りらしいだるまるのぬいぐるみ。宇都宮は「一人で開けてね」と念を押して大きめの箱を渡してきたから、これは絶対に開けないことにする。

そうして目一杯のプレゼントをもらい、柄にもなく表情がゆるむ。珍しい、なんてぽかんとする埼京のことは無視して、あれ、と首を傾げる。



「京浜東北」

「…何」



東海道が部屋に入ってから一度も口を開いていない京浜東北は、窓際でぼんやりと外を眺めていた。声をかけられやっとこちらを向いた表情は明らかに拗ねていて、声色も不機嫌そのもの。一瞬たじろいだ東海道だが、返事をしたということは会話をする気はあるらしいから、そのまま続ける。



「お前は何かくれないの」

「あげないよ」

「何で、」



即答され抗議しようとすると、京浜東北の目が睨むようにきつく歪んだ。



「…怒ってる?」

「別に」



君には関係ないよ、なんて言い残して、京浜東北は部屋を出て行ってしまった。



「俺なんかした?」

「拗ねてるだけでしょ」



早く行けば、とひらひら手を振る宇都宮は、何処からか出してきた紙袋にプレゼントの山を片付ける。ぴったり収まったそれを東海道に押し付けると、「明日の運行に支障がないようにね」と満面の笑みを浮かべた。それはもう、とてつもなく胡散臭い笑みを。





「京浜東北、いるのか」

声をかけると、玄関にいたのではないかという早さで扉が開いた。そこにいる彼の名前を呼ぶよりも早く、ぐいと手を引かれ部屋に引き入れられる。背後でガチャリと鍵を閉める音が聞こえたから、靴を脱いで上がり込む。
京浜東北の部屋は綺麗、というよりはほとんど物がない。小さな本棚に難しそうな本がいくらか入っていて、小さなテーブルに、大きくてふかふかのベッド。本当ならもっと大きな部屋を割り当てられていたのだが、広くて落ち着かないのだとこちらに移動したのはもう随分と昔の話だ。



「馬鹿じゃないの」

「…は」



適当にベッドに腰掛けると、台所からマグカップを持ってきた京浜東北が唐突に零す。間抜けな声で返せば、小さな溜め息をひとつ。



「みんなからお祝いされてデレデレしちゃって」

「・・・」

「良かったね、たくさんお祝いもらって」

「…お前、もしかして」



ヤキモチ?そう尋ねると、わかりやすく動揺してみせた。僅かに肩を揺らし顔を反らしたが、長めの髪からのぞく耳は赤い。



「でも、お前からまだもらってないんだけど」



「まだ欲しいの」



こくりと頷けば急に険しい顔付きになって、調子に乗りすぎたかもしれない、と言い訳を考える、けれど。



「…僕、」



小さな声で、聞き取れないくらい掠れた声で。



「僕、じゃだめかな。プレゼント」



眼鏡を外して真っ赤な顔で、恥ずかしさに潤んだ目で見上げるなんて。「要らないなら別にいいよ」とそっぽを向く京浜東北に、そんなの何処で覚えてきたの、なんて言ったって、これは天然に決まっている。駄目なわけがない。ああもう、何でこんな愛しい。ぎゅうと強く抱きしめたままベッドに押し倒せば、赤く色づいた唇が小さく動く。



「誕生日おめでとう、東海道」

「ありがと、京浜」

名前を呼ばれ幸せそうに細めた目から零れそうな雫に、東海道のキスが落ちる。それから後は、二人だけの秘密。






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背景水色じゃどうしても…可読性に優れなかったというか 色きもちわるい…
じゅにあはぴば記念。ブログからもってきた。
本当は書くつもりなかったのに某所のじゅにけ見たら書いちゃった、影響ってすごい!