お正月



[スーパー北斗(一次)×東急東横線(zeqカワセミ様二次)]



「東横くん、私大吉だ!」
「…ああ、良かったな」

歓声を上げる北斗と対象に、東横は苦々しげな表情で手に持ったおみくじを握りつぶした。それに首をかしげた北斗が覗きこむよりも先に、「凶、」と小さな声で呟く。

「えー?」

最悪だ、新年早々寒い中、こんな場所まで初詣に連れてこられただけでも不愉快なのに。そのうえ無理矢理ひかされたおみくじが凶だなんて。
何故こんなことになったんだろう。本当なら今ごろ、初詣に行く客を乗せて走っているはずだったのに。

「…っと、ねえ聞いてる?」

ぐるぐるととりとめのないことを考えていて、北斗の話なんて全然聞こえていなかった。不満げに頬を膨らませた北斗が見上げていて、それをほんの少しだろうと可愛いと思った自分が信じられない。そのうえ。

「大丈夫だよ東横くん、私大吉だから!一緒にひいたから半分こでしょ、だから2人とも小吉なの!」

自信あり気に、満面の笑みでそう言う北斗にうっかり見とれたなんて絶対に認めないし、その言葉が嬉しくて、初詣に来て良かっただなんて思ったことも絶対に何かの間違いだ。











[東海道本線×京浜東北]
(時間詐欺様の大正設定をお借りしています)




「そばが食べたい」だなんて唐突に言うものだから困ってしまった。そんな用意はまったくしていなくて、しかし東海道が食べたいというのなら京浜にとってそれは絶対だ。

「少し待ってください」とコタツをでて台所に向かう。そばなんてあっただろうか、なければこの時間に開いてるお店は――。

空気を読んだように棚の奥にあったそばに内心安堵して、年越しそばの用意をする。あと数分で今年が終わる。最後の瞬間にそばに居るのが東海道で、最初の瞬間にそばに居るのも東海道だ。それだけでこんなにも幸せな気持ちになれることを、きっと彼は知らないだろう。出来あがったそばを盆にのせ居間へ運ぶ。

「東海道さん」

呼びかけた声が小さくなってしまったのは、彼がこたつに突っ伏して眠っていたからだ。窓の外から職員がカウントダウンをする声が聞こえてくる。ああ、今年が終わる。
風邪をひかないようにと毛布を背中にかけようとしたところで、ひときわ大きな歓声があがった。あけましておめでとう、と職員が声を掛け合うのが聞こえる。

「今年もよろしくお願いします、東海道さん」

もぞ、と動いた東海道の唇が、小さく「京浜」と音を漏らした。